ピンちゃんの赤貧日記

明日は明日の風が吹く
いまだ霧の中を漂う
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    目がさめると道端の側溝で寝ていた。あたりを見回すと、どことも知れぬ山に囲まれた田舎のようである。風景から察するに、村と呼んで差し支えない。舗装された道が一本。あとは田畑と山だ。遠くに民家が見える。人里離れた山の中にワープしたわけではないことが分かったから安心したけれど、安心している場合だろうか。ここがどこだか全く分からないのである。

    頭脳明晰なピンちゃんだから、すぐに分かった事もある。昨晩飲んだのである。なぜなら酷く気分が悪い。宿酔いだ。しかしながら、ピンちゃんにも分からない事がある。記憶が確かなら(怪しいものだが)、昨晩はどこか街の店で飲んでいたはずだ。少なくとも、酔って自分でも分からない村まで歩いてきたとは思えない。

    ──ここまで考えるのにどのくらいの時間を要しただろう。随分長いこと側溝にはまっていた気もするし、2、3分だったかもしれない。何しろ側溝から這い出ないと話は始まらない。自分が住んでいたはずの文明世界に復帰しなくてはいけない。

    どちらへ進めばいいのかも分からないが、とにかく歩き始めた。ふと気づいてジーパンのポケットを探ってみたが何もない。中上健次『』の文庫本と財布がない。財布の中には全財産と免許が入っていたはずだ。財布はともかく、なぜ文庫本のことを思い出したのかは自分でも分からない。宿酔いどころか、まだ酔っていたというのに。

    あてどなく歩いていると、何かの気配を感じて振り向いた。マイクロバスが来たから、手を挙げてみると、簡単に止まってくれた。ドアが開いたから乗り込み、適当な座席に腰かけた。なるほど、このマイクロバスに乗っていれば、ピンちゃんが属していた街まで連れて帰ってくれるはずだ。何も考えられないから、ただ阿呆のように窓の外に流れる風景を眺めていると、なぜかマイクロバスが止まった。

    「あんた、降りてくれ」運転手がピンちゃんの前で言っている。なんと理不尽な。ピンちゃんを現実世界まで連れて行ってくれないつもりだろうか。何も悪いことなんてしていないのに。後で冷静になって考えれば、狭いマイクロバスの中に、ピンちゃんの呼気の中に含まれる「アセトアルデヒド」の臭気が充満したのだろう。

    これも後で気づいたのだけど、そのマイクロバスは自動車学校の定期バスで、決まったルートを周回していたのだ。手を挙げたから乗せてみれば酒臭い。どう考えても、今から自動車学校に行く生徒であるはずがない──というようなことを、運転手は考えたはずだ。なかなか論理的ではないか。

    自分の状況を説明できないほど深い霧の中にいたピンちゃんは、哀れ車外の人となった。あの時運転手を殴っていれば、ピンちゃんの人生は出だしの部分で躓いていただろう。まだ20代前半の出来事である。何となく自分の方が悪いような気がしたから、ピンちゃんがしたことは、走り出すマイクロバスのタイヤを外から蹴っただけである。

    すると、動き出したマイクロバスがもう一度止まり、運転手がピンちゃんにはよく分からない言語で喚き出した。宇宙人だったのかもしれない。その後の記憶は一時断絶しているが、気づくと村の駐在所の椅子に座っていた。朴訥とした口調で事情を聞いてくれた。ピンちゃんの説明は半分も理解できなかっただろうが。

    ピンちゃんが田舎の駐在さんに理解できないくらい高度な説明をしたからではなく、自分でも何がなんだか分からなかったからである。なぜバスの運転手はあんなに怒ったのだろう。

    ──ひととおりピンちゃんから事情を聞いた駐在さんは見当をつけ、ピンちゃんを、ピンちゃんが住んでいた街であろうことろまで連れて行ってくれた。やや霧が晴れつつあったピンちゃんは、見覚えのある風景を見て喜んだものである。

    その後、20数年たち、ピンちゃんはピンちゃんのままなのである。

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    象が踏んでも壊れない
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      昨晩トートツに思い出した。たぶん、ピンちゃんが小学1年生だった。床一面に筆入れ(筆箱?)を敷き詰め、その上を象が歩くCM。子供心におどろいて、とても欲しくなった。なんて商品だったか気になったので検索してみると、

      ○象が踏んでもこわれない! 『アーム筆入』の今
      http://www.excite.co.jp/News/bit/00091201161746.html

      商品名は「アーム筆入れ」らしい。さすがのピンちゃんもはっきりとは思い出せない(何となくそんな気はするけど)。実際は筆なんていれないのに、誰も不思議に思わず「筆入れ」といっていた時代である。もちろん下駄箱にも下駄は入れたことはない。

      当時はノートなら「コクヨ」で、鉛筆を使っていた。鉛筆削り器はごつく、手動と電動があった。電動削り器は高いから、最初はお金持ちの子供しかもっていなかったような気がする。ピンちゃんも電動をのちに買ってもらったけど、嬉しくて鉛筆をどんどん押し込み、今思えば削りクズ製造器と言っていい商品だった。鉛筆会社の陰謀だろう。

      シャープペンシルが売り出されたのは小学校の高学年になってからだったか。ただし、学校に持参するのは禁止されていた。その代り、中味が空洞のプラスチック製の筒に、各々芯がついたミニ鉛筆みたいなのをお尻から押し込むやつ(商品名は思い出せない)は学校で使ってもよかった。芯が減ってきて太くなったら引き抜き、またお尻から押し込むのだ。すると尖った芯が顔をだす。

      もちろん、色鉛筆というのもあった。特に赤と青はよく使う色だから、半分が赤で半分が青とかアイデア商品があった。別に普通に鉛筆削り器で削ればよいと思うのだけど、木ではなく紙で何重かに芯を巻き、芯が短くなると糸をひっぱり外側の紙を切る。紙だから手で毟り取ると赤い芯が現れるという珍商品もあった。思い出すと微笑ましい。

      現在の文房具業界がどうなっているのかは全く分からないけれど、学生に身近な文房具の変遷を調べれば、それだけでも面白そうだ。

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      法廷という名の欺瞞
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        興味があったので、ふと思いついて調べ始めました。何を調べたのかというと、人が人を「裁く」というのは、いつ頃から始まったことなのかと。もちろん、全世界的に、あちこちでいろんな形で始まったことであることはピンちゃんも想像できるのだけど、「裁判」という形式が整ってきたのはいつ頃からだったんでしょう。

        たぶん、上に書いたようなテーマでの専門的な書籍があるだろうし、法学部の人なら講義で習うんじゃないかと思いつつ、ピンちゃんは理学部だったからよく知らないのです。なぜ、こんなことが急に気になったかといえば、「冤罪問題」とか「裁判員裁判」からなんだけど、もう少し踏み込んで、ほんとに人が人を裁いてもいいのかという根源的な疑問もあるのです。

        検察は1度起訴したからには、何が何でも有罪にしようとするし、弁護側は何が何でも無罪とはいわなくても、量刑を低くしようとする。検察側としては、真犯人だと思えば(そう確信するだけの証拠があれば)、いくらでも頑張って欲しいけれど、近年になっても、意外に冤罪事件がある。

        そして、弁護士は、どう考えても鬼畜な犯罪者でも、弁護を引き受けたからには、事実関係を捻じ曲げてでも弁護しようとがんばる。それが職責だとしても、ピンちゃんは納得できないことが多々ある。例えば、「首都圏女性連続殺人事件」の犯人として捕まった「小野悦男」。供述も曖昧な点があり、そこを弁護団が突いて無罪判決を勝ち取り「冤罪のヒーロー」などと呼ばれた。

        けれど、その後、同居していた女性を殺害し死体の首を切断。首から下は燃やし、首は自宅裏庭に埋めていた。なぜか陰部を切り取っていたのだけど、それは冷蔵庫に保存。これ、小野悦男がもとからおかしかったとしか思えない。たぶん、知能も日常生活を送れるかどうかぎりぎりのところだったでしょう。今となっては藪の中とはいえ「首都圏女性連続殺人事件」も、小野の犯行だったんだろうと確信しています。

        無論ピンちゃんは、菅谷さんのケースのような場合の冤罪のほうが罪は重いと思う。無罪の人に「無期懲役」の判決を下す日本の司法制度。無罪の人に自白を強要し、その結果、ひょっとしたら彼は一生殺人者の汚名に甘んじながら塀の中だったかもしれない。そういう境遇に自分がなったらどうだろうと思うと、戦慄を禁じえない。

        だからピンちゃんは「疑わしきは罰せず」という方針は正しいと思っているけど、それにしても納得がいかないことが司法現場にはある。「オウム真理教」がサリン事件を起こした後、オウムの顧問弁護士で信者であった「青山吉伸」が逮捕された。

        テレビに露出するようになってからでも、明らかに白髪が増えたりして、そうとうの葛藤があったのだろうし、青山弁護士本人はオウムのサリン関係の犯罪のことは知らなかったと思う。しかし、彼が信者から巻き上げたお金関係では、どうみても犯罪者である。犯罪者だから逮捕されたのだけど、いきなり仲間の弁護士達が20数人の大弁護団を結成した。

        それ以降、青山弁護士の情報はほとんど報じられなくなり、裁判の結果どうなったんだかすら一般人には知らされない始末。おそらくは弁護団がマスコミを恫喝し、情報をシャットアウトしたんでしょう。弁護士が集まって本気で守ろうとすれば、犯罪者でもマスコミから守られてしまう。

        一方で、痴漢冤罪みたいに、自称被害者女性の証言だけで実名報道されて人生が狂ってしまうひともいる。司法の現場が、こんなに混乱と不公平に満ちているなんて、どうしても是認できないピンちゃんなのです。

        だからといって、どうすればこの混乱、不公平が是正できるのかというアイデアもピンちゃんにはないのだけど。

        ・・・

        ということで、少し本格的に調べてみようかと思い立ったのだけど、あまりにもテーマが大きすぎて、今すぐまとまった文章にはできない。すまん。ある程度ピンちゃんの頭の中で、系統だった思考ができるようになれば、またこのテーマで書いてみたいと思います。

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        人生の黄昏に
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          ピンちゃんが今警備している現場は街中の住宅街なんだけど、かれこれ1月半過ぎました。同じ場所、特に住宅街だと、近所に住んでいる人々の生活パターンがわかってきて興味深い。一戸建ての住宅の場合「表札」があるから名前も憶えてしまう。

          まだ40代後半くらいに見えるのに勤め人ではないらしい男性。家で働く仕事なのかなあ、朝晩二匹の飼い犬の散歩を欠かさない几帳面な人。近所の人との関係も悪くないようだし、ときどき車で外出しているから、対人恐怖症でひきこもっている訳でもない。でも、何をして食べてるのかなあと不思議に思ってます。

          もちろんピンちゃんはK林さんと無駄話しながら片側交互通行をしているのだけど、歩行者や自転車にも気を使うし、片交区間の民家からの車の出入りも注意しています。だから近所の人の生活パターンを自然と憶えてしまうのです。

          例えば、近所のマンションの女性はしょっちゅう車で出入りして、しかも、その時によって違う方向へ出て行くとか、○○さんは毎朝9時前後に車でどこかへ出かけて、夜遅くまで帰ってこない、みたいなことです。

          別に人様のプライベートを詮索している訳じゃないけど、どうしてもいろいろインプットされてしまいます。

          ・・・

          人生の黄昏に毎日同じ時間に徒歩で買い物に行くおばちゃんがいます。年齢は60才くらい。不自然にゆったりした足取りで、じっと前方を見つめながら一歩一歩確かめるように歩いている。背中には買い物袋代わりのリュックサックのようなものを背負っている。

          そのおばちゃんは歩道を歩いていて、ピンちゃんが仕事をしているあたりに近づいてくると、しきりにこちらを気にしてチラチラ見ている。最初はなんのことか判らなかったのだけど、軽く会釈してみると表情が崩れ、おばちゃんも会釈してくれた。どうやら嬉しいらしい。

          それ以来、毎日通りかかるたびに会釈を期待してか、今まで以上にこちらを気にするようになった。仕事中だから、あまり目を合わせないようにしているのだけど、片交であちこちに視線を走らせるので、時々目が合ってしまう。会釈すると、やはり複雑に表情が崩れる。あの表情は好意の表れなんだろうな。

          恐らくは軽い知的障害者だと思うのだけど、決まった時間に決まった道順で近所のコープまで買い物に行くのが、ある種の訓練になっているのでしょう。買い物帰りのおばちゃんのリュックにはしばしば長ネギが突き出ている。長ネギが好きらしい。

          リュックから長ネギが突き出ていると、前に買った長ネギが無くなったんだね、などと無線でK林さんと話し、事故に遭わなければいいがと気にしながら見送っています。自分で料理するのかなあ、感心なことだと思いながら、毎日通りかかるとき目が合うと会釈するのです。

          午後4時をすぎるとあたりは夕暮れに包まれ、近所から夕飯の仕度の気配が伝わってくる。夕飯の匂いで、ああ、あそこはカレーライスか、あそこは焼き魚だなと意識の片隅で思いながら、ピンちゃんとK林さんは、仕事が終わるまで片交し続けます。昔懐かしい感じを思い出しながら。

          きっとあのおばちゃんは、今日も近所のコープまで買い物に行く。一歩一歩確かめながら、前を見つめて。ピンちゃんとK林さんがいないことを、残念に思ってくれるのかしら。

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          岡目八目、近目レーシック
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            五感というからには、五つの感覚のことをいうはずで、それは何かと指折り数えれば、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚でありましょう。どれも大切な感覚ですね。

            ピンちゃんはどうでもいい現場では、携帯ラジオを聴きながら仕事をすることが多いのだけど、普段の状態を100%だとすれば、片耳でラジオを聴いていると、総合的な注意力というか判断力は、70%くらいまで低下すると感じてます。

            それなら聴くなよと思われるかもしれませんが、まあ、それでピンちゃんが大丈夫だと判断すれば、大丈夫なのです(笑)。暇な現場で8時間、ただ立っているだけってのも、かなりの苦痛なのです。それが仕事だろうと言われれば、返す言葉はないのだけど、今のところ、ラジオを聴いていたせいでのミスはないから、今後も続ける所存です。

            ・・・

            ところで、ピンちゃんはとても目が悪いのです。近眼なんだけど、大学生のとき、体育館に集まって視力検査したときなんて、なぜか裸眼視力を計ったから、0.1のひとなら見える一番上の「C」みたいな記号がどっちを向いてるのかも判らなかった。

            なので、「一歩前へ」「見えません」「もう一歩前へ」「見えません」「もう一歩前へ」「え〜と、上かな」みたいな感じでした(笑)。ピンちゃんの裸眼視力は、0.03くらいなのです。

            ・・・

            非常に前ふりが長かったけれど、ピンちゃんは「レーシック手術」というものについて語りたいのです。

            ○レーシック手術の患者、角膜炎に集団感染 銀座の眼科
            http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY200902250237.html

            今回、たまたま困った医者がいたことをもって「レーシック手術」そのものが危険だと言いたい訳ではありません。ひとによっては、メガネとかコンタクトレンズでは日常生活に困る人もいるだろうと思います。

            にもかかわらず、他人の事情は別として、ピンちゃんは絶対レーシック手術なんてしないもんね。何だか知らないけど、角膜だかにレーザー光線で切れ目を入れるそうじゃないですか。感染症以前に、その時点で怖い。怖すぎます。

            メガネ屋如きでも自動的に視力だか焦点位置だかを調べる機械がなかなか高度なことからも判るとおり、レーシック手術に使われる機械も高度に自動化されているそうで、現在のところ、それなりのところで手術すれば安全ではあるらしい。

            ピンちゃんほどの高学歴になれば(笑)、何となくそれはわかるのだけど、でも怖いっす。目にレーザー光線ですぜ。なんかの拍子に雷でも落ちて、機械が誤動作したら、取り返しがつかないような。もちろん、そうならないように、パソコンのUPSみたいな機構が組み込まれているに決まっているけど、でも怖い(笑)。

            ・・・

            ピンちゃんの親戚には大酒飲みが多いのは何度も書いたと思うけど、おもに母方の親戚のことばかり書いてきました。困ったことに、父方の親戚はもっと深刻で、飲みすぎたせいだと思われるのだけど、ほとんど失明状態のおじさんがふたりもいる(笑)。

            なんでも焼酎の飲みすぎで、30歳を過ぎてから急激に視力が低下して、ほとんど失明状態になったそうです。

            「ピン君、悪いことは言わないから、目だけは気をつけないといけないよ」

            ふたりのうちのひとりが、そう言ってくれたことをいまでも憶えています。だからピンちゃんは、目のことには敏感なのだけど、とてもレーシック手術なんて無理。絶対無理。レーザー光線の物理学的な原理は知っているけど、無理(笑)。

            ・・・

            もうね、目がいい人にいいたいのだけど、夜にメガネをはずした時に見える街中の光景は、とてもとても幻想的なんだよ。目がいいひとにはわかるまい。見えないことにいいことだってあるのです。

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