ピンちゃんの赤貧日記

明日は明日の風が吹く
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「次元解析」について
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    やぶからぼうに次元解析と言われてもなんのことやら分からないひとのほうが多いと思うけど、これは物理の話で、物理量には次元というものがあり、その物理量の次元について解析するのはとても大切なことなのである。

    分かりやすく説明すれば、

    A = B

    という等式があった時、物理学においては最低でも両辺の次元が一致していなければならない。「最低でも」とわざわざ断っているのは、次元のほかに「単位」というものがあり、数値まで含めて正しい等式であるためには単位も一致させなくてはいけないからである。

    例えばA式では長さの単位にメートルを使っているのに、右辺Bではセンチメートルを使っていては話が合わなくなって当然である。次元というのはもう一段本質的な話で、Aでは「長さ」の話なのに、Bでは「時間」に関する物理量であれば、これは次元があっていないということになる。

    物理学で基本となる次元について説明すれば、以下のみっつである。

    長さ:[L]
    質量:[M]
    時間:[T]

    確かにこの三つの量は別のものから誘導して定義することはできない。具体例のほうが分かりやすいと思うので例を挙げれば、

    速度=長さ÷時間=[L]/[T]=[L][T^-1]

    加速度=速度÷時間=[L]/[T^2]=[L][T^-2]

    力=質量×加速度=[M][L]/[T^2]=[M][L][T^-2]

    運動量=質量×速度=[M][L]/[T]=[M][L][T^-1]

    などである。次元解析の素朴な有用性ということでいえば、何かの物理量を計算したとき、次元がどうなっているのか確認する習慣をつけておけば、とんでもない間違いを犯すことはなくなるということがある。30年前の高校物理の教科書では「次元」についても説明してあったけれど、現在はどうなっているのだろうか。

    ちなみに、単位はあるけど無次元の物理量としては角度があり「ラジアン」などと呼んでいる。単位と次元はしばしば混乱が見られるので注意が必要である。

    ・・・

    ところで、ニュートンの運動方程式は「位置」の1回微分を速度、2回微分を加速度と定義しているが、位置というのはやはり長さの次元を持っていることが上の例からもわかる。長さというからには、どこかの基準を原点とし、そこからの距離を位置というのだろう。

    微分の数学的な定義では極限操作で長さをゼロにするような書き方になっているけれども、大きさは限りなくゼロに近づきつつ長さの次元は残るような操作でなくては矛盾が出てしまう。

    更に興味深い例を挙げれば、

    E = MC^2 (1)

    E = hν (2)

    という二つの等式がある。両式とも左辺はエネルギーを表しているから、右辺もエネルギーの次元になっていないとおかしい。しかるに、(1)式では質量に光速の2乗を掛けたもの、(2)式ではプランク定数hに振動数νを掛けたものになっている。

    一見全く違う物理量のように見えるのに、両式はどちらもエネルギーを表現しているのである。一応、物理的な意味合いを説明しないと分からないかもしれないので、上に出てくる記号について説明しておくと、

    M:質量
    C:光速(=2.99792458×10^8(m/s))
    h:プランク定数(=6.626176×10^-34(Js))
    ν:振動数

    である。Cとhは物理定数なので、それぞれ「数値」と「単位」が決まっている。むろん、単位が変わると数値も変わる。しかし、どのような単位系でも次元は変わらないのである。MとCは同じ意味で小文字のmとcを使うこともある。

    さて、以上で記号に関する情報はすべて分かったことになるけれども、その意味するところはどうであろうか。

    (1)式は特殊相対論からの帰結であるが、普通、質量m、速度vで運動している粒子の運動エネルギーは0.5mv^2と表され、一目見て(1)式と同じ次元であることはわかる。けれども、(1)式においては0.5という係数がないことと、速度がvではなく、光の速度Cの2乗になっているところが違う。

    実は質量MというのはM=γmと書くことができ、ここでγはローレンツ因子であり──という具合に、特殊相対論のさわりの部分について話を展開しようと思ったのだけど、次元解析から外れてしまうのでやめておく。この話はまた別の機会にしておこう。

    (1)式の物理的な意味としては、質量に速度の2乗を掛けるとエネルギーの次元になるという話にとどめておく。次元としては、

    (1)=[M][L^2][T^-2]

    である。物理学においてエネルギーの別表現を挙げれば「仕事」というのがある。

    仕事=力×距離=[M][L][T^-2]×[L]=[M][L^2][T^-2]

    であるから、めでたく(1)式と同じ次元になっている。エネルギーにしろ力にしろ、物理量というものは単位の取り方によって数値は変わってくるけれども、次元は同じでなくてはならない。従って、(1)と(2)の右辺も同じエネルギーどうしなので、同じ次元でなくてはならない。

    改めてふたつの等式を言葉で書けば、

    (1)=質量×速度×速度
    (2)=プランク定数×振動数

    してみると(2)式に出てくるプランク定数hというのが曲者であるのがわかる。けれども、その前に振動数νが何者であるのか説明しないといけないだろう。いったい何が振動しているというのか。

    (1)式が特殊相対論からの帰結であったように、(2)式は量子論からの重要な帰結であり、ここに出てくる振動数νというのは光が持っている振動数の事である。古典物理の立場から説明すれば、光というのは電磁波の事であり、電磁波というのは電場と磁場が絡み合いながら波動として進んでいく現象である。

    その波動の振動数がここに出てくるνであり、νにプランク定数を掛けると光のエネルギーになる。

    ということで、一般的に言えばνというのは単位時間当たりに何かが振動している回数のことで、次元で言えば[T^-1]である。回数に物理的な次元があるというのは不思議な気がするけれども、これは重要な点である。

    当然νには単位があり「ヘルツ(Hz)」である。テレビやラジオで使用されている周波数帯は〇×ヘルツです、などというときのあれである。

    さて、残るはいよいよプランク定数である。νの次元が[T^-1]だと分かったからには、(1)式や「仕事」の次元と比較して、

    プランク定数=[M][L^2][T^-1]

    でなくてはならぬことはすぐに分かる。上の方でプランク定数の数値と単位を書いておいたけれども、Jsというのは(ジュール×秒)のことで、これはエネルギーに時間をかけた単位になっている。従って、プランク定数に振動数を掛ければちょうどエネルギーになる。

    しかししかし、よく考えてみれば(2)式は光のエネルギーを表す式であるのに、次元の中に[M]が入っている。光は厳密に質量がゼロであることが分かっているにも関わらずである。これはどういう意味であろうか?

    同様の例を挙げれば、運動量がある。デカルトが運動の程度を表す量として運動量(mv)を導入した時代には当然粒子や物体、とにかく質量のあるものを想定していた。

    ところが、元来波動として取り扱われていた光に粒子的な側面があることが分かり、質量のない物理的実体にも運動量が定義されることになってしまった。つまり「質量×速度」で定義できないにも関わらず、運動量を持っている。

    更に、本来は粒子と思われていた電子にも波動としての性質があることまで分かってしまい自体はますます複雑になった。これを物理の分野では「波動と粒子の二重性」という。

    こうして元来波動であると思われていた光に粒子性があり、粒子であると思われていた電子に波動性があることが分かり、その矛盾を解決すべく作られた理論が量子力学であり、その過程で導入されたのがプランク定数hである。

    従って、プランク定数hを含むような物理量の場合、質量Mがゼロにも拘らず次元解析をすると[M]が入り込んでしまう場合がある。

    【追記】2017.12.08
    上の記述では電磁気学についての説明が抜けているので加筆する。

    電磁気に於いて問題になる物理量と言えば電場E、磁束密度Bである。

    F = q(E + v×B)

    どちらも上のローレンツ力で定義されているから、その大きさは電場も磁束密度も力に比例している。次元解析の概念がいつごろできたのか不明であるが、電荷qを持っている物理的実体としては電子と陽子が想定されていたと思われ、どちらにも質量[M]がある。従ってローレンツ力Fは質量×加速度で定義された力である。

    よって、ニュートン力学、古典電磁気学の範囲においては次元解析に矛盾は生じない。やはり矛盾が生じてくるのは、等式にプランク定数hが混入している場合である。

    | 科学全般 | 00:00 | comments(1) | trackbacks(0) |
    コメント
    私は、40年前{単位で解く}といって、物理・化学で使っていました。授業で受けた記憶はないです。今の物理基礎(高校1年用)教科書には、巻末資料で次元の説明がありました。
    | 只の老人 | 2017/12/06 8:52 AM |
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