ピンちゃんの赤貧日記

明日は明日の風が吹く
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人生のほろ苦さと成功確率1%
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    ツイッターをのぞいていたら、たまたま目にした話題が面白かったので取りあげてみたいと思います。とある財界人──などとにごしても下で記事を引用するのではっきり書けば、元プロ野球選手の山本昌氏とスカイマーク代表取締役会長の佐山典生氏が対談し、その記事がツイッターで宣伝され、ごく一部で話題になりました。

    【佐山×山本昌】イチローに電話で伝えた「50歳までやる秘訣」
    https://newspicks.com/news/1868817/

    有料会員限定の記事なので詳しい中身までは読めませんが、ツイッターでは以下の部分が「さわり」として紹介されていました。

    『 難しそうだから挑戦しないといつまで経っても達成感の得られることはできません。成功確率1%でも100挑戦し続ければ、できる可能性が100%になります。少しでも可能性のある「できたら面白そう」なことには挑戦すべきだと思います。』

    論旨としては「少しでも可能性があるならどんどん挑戦しよう」というほどの話でどこにも問題はなさそうに見えるのですが、これに文句を言う人が何人かいたようです。何が問題かと言えば、下記の部分。

    成功確率1%でも100挑戦し続ければ、できる可能性が100%になります

    これ、一見正しそうなのだけど、数学的には誤りです。どこがどう誤りなのかを簡単に説明してみましょう。

    ・・・

    佐山氏はうっかりしただけだと思いますが「1回挑戦して成功する確率が1%なら、100回やれば1回は成功するだろう」と誤解されたのでしょう。それを「できる可能性が100%になります」と言ってしまった。

    ところで、確率の話をするとき100回というのは実は試行回数が大きすぎて分かりづらいので、もう少し単純な話に変換してみます。例としてはやはりサイコロが適当でしょう。

    佐山氏の話をサイコロに翻訳すれば「サイコロを振って1の目が出る確率は1/6だから、6回振れば1回は1の目が出る(確率は100%である)」と言ったことになります。さて、サイコロ遊びをしたことがあるひとなら、6回振れば「必ず」1回は1の目がでる「とは限らない」ことを経験として知っているかもしれません。

    では、いったいどこが誤っているのか。

    6回サイコロを振って少なくとも1回は1の目が出る確率を直接計算してもいいのですが、その場合は「少なくとも1回は1の目が出る」というのが曲者で、6回のうち何度でも1の目がでる確率を含めてすべて足し合わせないといけなくなります。

    直接計算するのは場合分けが面倒なので、逆に「6回とも1の目がでない確率」を計算したほうが簡単です。サイコロを振った時1以外の目が出る確率は5/6ですが、これを6回繰り返して全て1以外の目が出る確率は、

    (5/6)×(5/6)×(5/6)×(5/6)×(5/6)×(5/6)= 15625/46656

    になります。上の確率は6回連続で1以外がでる確率なので、求めるべき「6回のうち少なくとも1回は1の目が出る確率」は、全確率1から15625/46656を引けばいいことになります。

    1 − 15625/46656 = 31031/46656 ≒ 0.665

    つまり、成功する確率が1/6の場合、6回挑戦しても成功する確率は100%にはならず、67%程度なのです。

    ・・・

    この話を一般化し、失敗確率をx、挑戦回数をn、n回連続して挑戦したとき少なくとも1回は成功する確率をP(n)とすれば、

    P(n) = 1 − x^n

    と書くことが出来ます。佐山氏の例え話の場合は、

    P(100) = 1 − 0.99^100 ≒ 0.634

    となり、100回挑戦しても63%ほどしか成功確率はありません。すなわち、37%近い確率で1度も成功しないことがあり得るのです。しかし、努力が無駄かと言えばそんなことはなく、挑戦回数を千回、一万回と増やしていけばどんどん成功確率は増えていきます。

    努力すれば成功する確率が増えていくのは当然のことで、そうでなくては困るのですが、上で説明してきた単純化された世界では1億回挑戦したとしても失敗する確率がゼロになることはありません。

    数学の世界においても人生のほろ苦さがほんの少し混入してしまうのを避けることはできないのです。
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