ピンちゃんの赤貧日記

明日は明日の風が吹く
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空がこんなに青いのだから
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     「突然かもしれないけど、いいよね?」
     彼女はそう言うけど、僕はどうしたらいいのか分からない。
     もちろん彼女は、僕と彼女の関係を清算してもいいよねと言っている。鈍感な僕だって、それくらいは分かっている。分かっているからこそ、どうしたらいいのか分からない。

     そろそろ彼女の誕生日だから、彼女が喜びそうなものをリサーチしようかなと思い始めていたというのに、突然の別れ話である。こんなのアリなの? どうしたらいいのか、分からないよ。
     僕の何が悪かったのだろう? せめて、それくらいは教えてもらう権利があるだろう。

     「だって、〇〇君、君は私のこと好きじゃなかったじゃない」

     これには腰が抜けるほど驚いたけれど、彼女がいいたいことはなんとなく分かる。けれど、僕は君のことが好きだったよと言うしかなかった。

     「違うわ、あなたは、私のことが嫌いじゃなかっただけ」

     そんな言いぐさはないだろうと思った。だって、嫌いじゃなかっただけなんて酷いよ。付き合いだして3年目だけど、僕は毎年、どうしたら君が喜ぶか想像しながらプレゼントを用意していたんだよ。大好きだよと口に出すのが恥ずかしいから、言えなかっただけじゃないか。僕が引っ込み思案だった罪で、君は僕を有罪だというのかい。

     「そんなことないよ。僕は君のことが好きだったよ」

     今更そんなこと言うの? どうせなら、もっと早く言って欲しかったわ。いや、君はそう言うけど、いったい僕のどこが不満なの?

     ところで、あなたは憶えているかしら。私たちが初めて会った時のこと。どうしてそんなこというのさ。忘れるはずがないじゃないか。そうよね、あの時、私は王子様が現れたと思ったのよ。有り得ないくらい劇的な出会いだと思ったの。

     「僕だってそう思ったよ。ねえ、僕の何が不満になったの?」
     「そんなことをあからさまに訊くようになった、あなたに不満なの」
     「答えになってないよ。そんな言い方ずるい」

     あらあら、困ったちゃんねという表情で彼女は僕を見つめ微笑んでいる。その笑顔に僕は惚れたのになあ。成程、空は青い。僕も君もまだ若い。

     空がこんなに青いなら、きっと、君も気持ちよく生きていけるよね。青い空を飲みこんで、君の未来を祝福するよ。
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