ピンちゃんの赤貧日記

明日は明日の風が吹く
『量子力学を学ぶための解析力学入門』高橋康著
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    量子力学を学ぶための解析力学入門
    高橋 康 講談社 売り上げランキング: 605,401


    三週間近くかかりましたが、ようやく読み終わりました。高橋康先生の教科書は何冊かもっていますが、最後まできちんと読んだのは本書だけかもしれません。しかも、大学生時代に最低でも1回、おそらく2回くらい読んでいて、今回で3回目になると思います。

    なぜ本書に限ってそんなに読んでいるかというと、本文だけなら90頁ほどしかない薄い教科書だからです。にもかかわらず、全体的な理解度としては6〜7割くらいかなあ。意外に難しかったです。本文だけなら8割くらいの理解度だと思うのだけど、演習問題と付録が難しいのです。

    先に目次を紹介して、少し個別の感想を先に書いておきます。


    量子力学をこれから学ぶ人への助言
    第犠 Euler-Lagrange および Hamilton の方程式
    第蕎 Hamilton の原理(変分原理)
    第珪 正準形式の理論
    第絃 正準変換
    第江 Poisson の括弧
    第詐 位相空間
    付録
    A. Lagrange の未定乗数報
    B. Legendre 変換
    C. 不変性と保存則
    D. 場の理論への拡張
    演習問題略解
    参考文献
    あとがき

    高橋康先生の教科書の特徴は、まずは本論第犠呂貌る前にあります。わざわざ第0章と書いてある場合もあるくらいで、このまえがき部分がけっこう長い。内容はぼやきであったり世間話もまじったりするのだけど、本書の序は「量子力学の初歩的なことを理解するために必要な、最小限度の解析力学をまとめたのが本書である」と、まずは本書の性格についてズバリ言及してはじまっています。

    「量子力学をこれから学ぶ人への助言」は本文90頁ほどの本書で12頁も割くという念の入れよう。ここで、量子力学の勉強をするために必要な古典力学の知識は、1冊の本にするには足りないが、別の本の付録にするには長すぎる程度であるというありがたいお話があります。こういう重要なお話はどんどんしていただきたいですね(笑)。

    あとは量子力学を学ぶために必要な知識としてどのようなものがあるかについていろいろ書いてあるのだけど、それについては実際に購入して読んでいただきたいと思います。

    で、第犠呂任魯縫紂璽肇鷏措阿犯罎戮謄イラー・ラグランジュ形式にはどんな利点があるのかについて説明されております。例として直交座標系から極座標へ運動方程式を書き変えているのだけど、実際に計算してみるとこれが大変です。まあ、物理学徒であれば一生になんどかはやるべき計算なので、まだやったことがないひとはちょうどいい機会なので実際に計算してみることをお勧めします。

    第蕎呂任郎醉兩冓を変分してオイラー・ラグランジュ方程式を導き出すという標準的な説明が続きます。第珪呂妊薀哀薀鵐献絅▲鵑鬟襯献礇鵐疋詈儡垢靴謄魯潺襯肇縫▲鵑鯆蟲舛垢襪函△修離魯潺襯肇縫▲鵑正準方程式を満たしているという話。第絃呂妊魯潺襯肇鵑寮欺猜程式も変分原理から導くことができることが示され、オイラー・ラグランジュ方程式との違いなどについて説明してあります。

    第犠呂らラグランジュアンの不定性(任意性)についての言及があったのですが、ハミルトニアンでも同様な不定性があり、変換の母関数の重要性について取り上げられています。正準変換と母関数、保存量の関係など重要な話が出てきます。第江呂妊櫂▲愁鶻膰未力辰砲覆蠅泙垢、古典力学の方が量子力学より少し定義が複雑です。ここでようやく量子力学との係わりがおぼろげに見えてきます。

    最後の第詐呂任楼盟蟠間について簡単に触れられていますが、これは全く触れないのもまずいかなという程度で簡単に終わってしまいます。以上90頁ほどなのですが、本文だけならそれほど難しくはないと思います。難しいのは主に付録と演習問題です。

    ここで付録に時間をかけても無駄な気がしたので、私は軽く目を通して読了ということになりました。私の印象では、実際に量子力学の勉強をしてからもう一度本書に戻ってきてよく分からなかった点について考え直した方が効率的だと判断しました。

    ・・・

    あとがきによれば、本書を読んで話の筋が分かったと思ったら、特に第江呂離櫂▲愁鶻膰未竜掴世抵抗なく理解できたと思ったらば、量子力学を勉強するための古典力学の知識としてはまあ大丈夫だろうとのこと。わたしもぎりぎり合格ということにして次に進みたいと思っています。
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    『物理学序論としての力学』藤原邦男著
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      物理学序論としての 力学 (基礎物理学1)
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      うーむ、こんなに熱い物理教師がいたのか。本書が手元にとどき、まずは「はしがき」を読み唸らされた。いまだかつて、物理学書の前書きでここまで熱い思いを込めた文章を目にしたことはなかった。これからもないだろう。

      筆者藤原邦男氏の物理学とその教育に対する迸る情熱がどれだけ本書に込められているか、最初の部分だけでも引用せずにはいられない。少々長いが心して読まれたい。
       大学初年度における物理学の講義は、ほとんどすべてが力学から始まる。それは恐らく、力学が、物理学の中でも(幾何光学などと共に)もっとも古くから体系を整え、その後の物理学発展の範となった分野であり、また、力学で導入される力、運動量、エネルギー、……といった概念が物理学全体をつらぬく基礎概念として、先ず最初に習得されるべき性格のものだからであろう。理由はともあれ、とにかく最初に話される分野ということで、力学の講義は、否応なしに物理学序論としての役割をもになわされているわけである。
       だが、力学の講義に課せられた特別な使命は多分それだけではない。この講義が、恐らくは自らの中に日々高まりゆく何ものかを漠然と感じながら集い来ったであろう前途有為の若者たちを前にして開講される、最初の講義の一つであることを思うとき、彼らをして一日も早くその内なるものの正体に気づかせ、学問することの喜びに目ざめさせるよう努力することこそ、この力学の講義に課せられた急務であるとの感を深くする。何故なら、学問に目ざめる以前の若者に教育を施すものは教師であるが、目ざめてのちの彼らを教育するものはもはや他者ではなく彼ら自身である。そして古来、真の教育の成果は、常に、この、自らが自らに対して行なう教育の中にこそ見出されて来たからである。
       以上2つの使命に加えて、筆者は本書に対し研究者の養成という第3の使命をも課した。それは、本書の読者のうちの何割かは、将来研究者として、学問・技術の発展に対しその生涯を捧げることになるであろうと判断したからに他ならない。研究者とは、未知に遭遇してたじろがぬもののことである。自らに対しオリジナルな課題を与え得るもののことである。そして、もしそれが必要なら、いつでも群を離れて独りで闘えるもののことであろう。そのような研究者を育てるための確実な方法をもちろん筆者は知らない。だが、研究者が上記のような性格を備えた存在である以上、単なる知識の習得訓練以外の何らかの、一見、時間の無駄とも見える試みが早くからなされる必要があることだけは確かであろうと思われる。
       上記3つの使命を念頭において書かれた本書は、したがって単に力学を教えるための力学の本ではない。たとえ結果的に見てその試みは失敗に終わっていようとも、力学を通じて物理学の何たるやを語ろうとした本であり、力学を素材として学問することの喜びくを伝えようとした本であり、そして力学教育を通して研究者の養成に資することを念願して書かれた本である。

      どうだろうか、この迫力。この迫力で「はしがき」は更に本書の特徴と具体論と続くのであるが、興味のある方は下にある「続きを読む >>」をクリックして頂きたい。そこにこの恐るべき「はしがき」の全文を載せてある。

      ・・・

      上で引用した文章を読んだだけで本書が他の力学教科書と一線を画すものであることはおわかりであろう。少なくとも筆者藤原氏はそう願い、心血をそそいで本書を完成させたのである。藤原氏は本書により学問することに胸躍らせ入学してきたであろう大学生にに対し「学問することの喜びに目ざめさせるよう努力すること」を急務とし、更に「研究者の養成」をも志している。

      その目的のため従来の教科書にはない方法として古典にその範を求めている。つまり、どのように力学という学問が形成されてきたのか、その過程をつまびらかにたどることで読者にある程度の追体験を味わってほしいと念じているようだ。そのための手間は惜しまず実験データの収集などに明けくれたとはしがきにある。

      学問というものは決して最初から壮麗な構造物として突然現れるのではなく、多くの人々の手を経ることで次第に積み上げられ研かれてできあがることを知ることにより、力学の真髄を身に着けるともに、研究者として必要な強靭な思考力をも獲得することを目指している。また、未開拓の研究という荒野をつきすすむとき「近似」の重要性を意識せねばならない。その点についても本書では強調されている。

      筆者の思い入れは分かったとして、具体的な中身も気になる方が多くいるだろう。まず目次を抜き書きしてみよう。

      第1章 はじめに
      第2章 質点の運動とその法則
      第3章 運動方程式の解法
      第4章 仕事とエネルギー
      第5章 振り子について
      第6章 万有引力
      第7章 相対運動
      第8章 質点系の力学
      第9章 剛体の力学(機
      第10章 剛体の力学(供
      第11章 解析力学

      さて、11章に分かれているが、力学教科書の章立てとしては割と普通である。第1章は力学の成立に欠かせない歴史的な物語、すなわちコペルニクスからティコブラーエ、ケプラー、ニュートンなどの物語である。簡単な物理学史のおさらいではなく、惑星などの観測データからどのように力学が形成されていくのか、本気で考えながら読み進めることになる。

      私は本書を今日アマゾンから受け取ったばかりであるから、きちんと目を通したのは2章の途中までである。普通ならすべてに目を通してから感想をかくのであるが、はしがきがただごとではなかったので驚き、本書のようなユニークな力学教科書が存在することをまずは皆さんに伝えたかった。

      今からこの教科書で力学を復習し、結果を詳細にリポートしたいと思っている。少々時間はかかると思われるが、皆様におかれてはたのしみに待っていて欲しい。

      ・・・
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      「次元解析」について
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        やぶからぼうに次元解析と言われてもなんのことやら分からないひとのほうが多いと思うけど、これは物理の話で、物理量には次元というものがあり、その物理量の次元について解析するのはとても大切なことなのである。

        分かりやすく説明すれば、

        A = B

        という等式があった時、物理学においては最低でも両辺の次元が一致していなければならない。「最低でも」とわざわざ断っているのは、次元のほかに「単位」というものがあり、数値まで含めて正しい等式であるためには単位も一致させなくてはいけないからである。

        例えばA式では長さの単位にメートルを使っているのに、右辺Bではセンチメートルを使っていては話が合わなくなって当然である。次元というのはもう一段本質的な話で、Aでは「長さ」の話なのに、Bでは「時間」に関する物理量であれば、これは次元があっていないということになる。

        物理学で基本となる次元について説明すれば、以下のみっつである。

        長さ:[L]
        質量:[M]
        時間:[T]

        確かにこの三つの量は別のものから誘導して定義することはできない。具体例のほうが分かりやすいと思うので例を挙げれば、

        速度=長さ÷時間=[L]/[T]=[L][T^-1]

        加速度=速度÷時間=[L]/[T^2]=[L][T^-2]

        力=質量×加速度=[M][L]/[T^2]=[M][L][T^-2]

        運動量=質量×速度=[M][L]/[T]=[M][L][T^-1]

        などである。次元解析の素朴な有用性ということでいえば、何かの物理量を計算したとき、次元がどうなっているのか確認する習慣をつけておけば、とんでもない間違いを犯すことはなくなるということがある。30年前の高校物理の教科書では「次元」についても説明してあったけれど、現在はどうなっているのだろうか。

        ちなみに、単位はあるけど無次元の物理量としては角度があり「ラジアン」などと呼んでいる。単位と次元はしばしば混乱が見られるので注意が必要である。

        ・・・

        ところで、ニュートンの運動方程式は「位置」の1回微分を速度、2回微分を加速度と定義しているが、位置というのはやはり長さの次元を持っていることが上の例からもわかる。長さというからには、どこかの基準を原点とし、そこからの距離を位置というのだろう。

        微分の数学的な定義では極限操作で長さをゼロにするような書き方になっているけれども、大きさは限りなくゼロに近づきつつ長さの次元は残るような操作でなくては矛盾が出てしまう。

        更に興味深い例を挙げれば、

        E = MC^2 (1)

        E = hν (2)

        という二つの等式がある。両式とも左辺はエネルギーを表しているから、右辺もエネルギーの次元になっていないとおかしい。しかるに、(1)式では質量に光速の2乗を掛けたもの、(2)式ではプランク定数hに振動数νを掛けたものになっている。

        一見全く違う物理量のように見えるのに、両式はどちらもエネルギーを表現しているのである。一応、物理的な意味合いを説明しないと分からないかもしれないので、上に出てくる記号について説明しておくと、

        M:質量
        C:光速(=2.99792458×10^8(m/s))
        h:プランク定数(=6.626176×10^-34(Js))
        ν:振動数

        である。Cとhは物理定数なので、それぞれ「数値」と「単位」が決まっている。むろん、単位が変わると数値も変わる。しかし、どのような単位系でも次元は変わらないのである。MとCは同じ意味で小文字のmとcを使うこともある。

        さて、以上で記号に関する情報はすべて分かったことになるけれども、その意味するところはどうであろうか。

        (1)式は特殊相対論からの帰結であるが、普通、質量m、速度vで運動している粒子の運動エネルギーは0.5mv^2と表され、一目見て(1)式と同じ次元であることはわかる。けれども、(1)式においては0.5という係数がないことと、速度がvではなく、光の速度Cの2乗になっているところが違う。

        実は質量MというのはM=γmと書くことができ、ここでγはローレンツ因子であり──という具合に、特殊相対論のさわりの部分について話を展開しようと思ったのだけど、次元解析から外れてしまうのでやめておく。この話はまた別の機会にしておこう。

        (1)式の物理的な意味としては、質量に速度の2乗を掛けるとエネルギーの次元になるという話にとどめておく。次元としては、

        (1)=[M][L^2][T^-2]

        である。物理学においてエネルギーの別表現を挙げれば「仕事」というのがある。

        仕事=力×距離=[M][L][T^-2]×[L]=[M][L^2][T^-2]

        であるから、めでたく(1)式と同じ次元になっている。エネルギーにしろ力にしろ、物理量というものは単位の取り方によって数値は変わってくるけれども、次元は同じでなくてはならない。従って、(1)と(2)の右辺も同じエネルギーどうしなので、同じ次元でなくてはならない。

        改めてふたつの等式を言葉で書けば、

        (1)=質量×速度×速度
        (2)=プランク定数×振動数

        してみると(2)式に出てくるプランク定数hというのが曲者であるのがわかる。けれども、その前に振動数νが何者であるのか説明しないといけないだろう。いったい何が振動しているというのか。

        (1)式が特殊相対論からの帰結であったように、(2)式は量子論からの重要な帰結であり、ここに出てくる振動数νというのは光が持っている振動数の事である。古典物理の立場から説明すれば、光というのは電磁波の事であり、電磁波というのは電場と磁場が絡み合いながら波動として進んでいく現象である。

        その波動の振動数がここに出てくるνであり、νにプランク定数を掛けると光のエネルギーになる。

        ということで、一般的に言えばνというのは単位時間当たりに何かが振動している回数のことで、次元で言えば[T^-1]である。回数に物理的な次元があるというのは不思議な気がするけれども、これは重要な点である。

        当然νには単位があり「ヘルツ(Hz)」である。テレビやラジオで使用されている周波数帯は〇×ヘルツです、などというときのあれである。

        さて、残るはいよいよプランク定数である。νの次元が[T^-1]だと分かったからには、(1)式や「仕事」の次元と比較して、

        プランク定数=[M][L^2][T^-1]

        でなくてはならぬことはすぐに分かる。上の方でプランク定数の数値と単位を書いておいたけれども、Jsというのは(ジュール×秒)のことで、これはエネルギーに時間をかけた単位になっている。従って、プランク定数に振動数を掛ければちょうどエネルギーになる。

        しかししかし、よく考えてみれば(2)式は光のエネルギーを表す式であるのに、次元の中に[M]が入っている。光は厳密に質量がゼロであることが分かっているにも関わらずである。これはどういう意味であろうか?

        同様の例を挙げれば、運動量がある。デカルトが運動の程度を表す量として運動量(mv)を導入した時代には当然粒子や物体、とにかく質量のあるものを想定していた。

        ところが、元来波動として取り扱われていた光に粒子的な側面があることが分かり、質量のない物理的実体にも運動量が定義されることになってしまった。つまり「質量×速度」で定義できないにも関わらず、運動量を持っている。

        更に、本来は粒子と思われていた電子にも波動としての性質があることまで分かってしまい自体はますます複雑になった。これを物理の分野では「波動と粒子の二重性」という。

        こうして元来波動であると思われていた光に粒子性があり、粒子であると思われていた電子に波動性があることが分かり、その矛盾を解決すべく作られた理論が量子力学であり、その過程で導入されたのがプランク定数hである。

        従って、プランク定数hを含むような物理量の場合、質量Mがゼロにも拘らず次元解析をすると[M]が入り込んでしまう場合がある。

        【追記】2017.12.08
        上の記述では電磁気学についての説明が抜けているので加筆する。

        電磁気に於いて問題になる物理量と言えば電場E、磁束密度Bである。

        F = q(E + v×B)

        どちらも上のローレンツ力で定義されているから、その大きさは電場も磁束密度も力に比例している。次元解析の概念がいつごろできたのか不明であるが、電荷qを持っている物理的実体としては電子と陽子が想定されていたと思われ、どちらにも質量[M]がある。従ってローレンツ力Fは質量×加速度で定義された力である。

        よって、ニュートン力学、古典電磁気学の範囲においては次元解析に矛盾は生じない。やはり矛盾が生じてくるのは、等式にプランク定数hが混入している場合である。

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        『大学入試必修物理(下)』駿台受験叢書
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          さて、『必修物理』下巻をようやく読み終えることができた。上巻を読み終え感想を書いたのが11月8日だったので()、一月ほどかかったことになる。出てくる数式などもフォローしながら丁寧に読むとそれくらいはかかっちゃうなあ、というのが正直な感想かな。

          上巻に関しては理解度80〜90%くらいと自己判定していたのだけど、下巻は70〜80%というあたりだろうか。やや不満が残るものの、あまりのんびりしていられなくて後半はやや読み飛ばし気味になってしまった。ところどころ数式を追えないところもあったし。それ以外に、そもそも下巻の方が難しかったということもある。

          ということで、下巻の目次を抜き書きして章ごとに簡単な感想でも書いておきましょうか。参考のため上巻の目次も書いておきますね。

          上巻
          1 質量と電気量──粒子に固有の量
          2 速度と加速度──運動を記述する量
          3 運動量と運動エネルギー──運動の基本量
          4 重力と静電場──相互作用エネルギー
          5 弾性波と音波──運動形態の伝播
          6 温度──統計量

          下巻
          7 角運動量──もう一つの運動の基本量
          8 電流──電子運動の巨視的現象
          9 電磁場──静電場からの発展
          10 光──電磁波として
          11 プランク定数──微視的世界の運動記述
          12 高エネルギー現象──粒子の生成・消滅

          こうして眺めてみると下巻はとても高校生用の教科書とは思えない。まず7章の角運動量なんだけど、剛体とか多粒子系の力学なんですね。重心運動とかでてくるのだけど、ここは明らかに大学受験の範囲外です。私が高校生だった30年以上前でも範囲外でしたぞ。

          とはいえ、何を隠そう大学の物理学科に進学したのに私はほとんど剛体の勉強をしたことがない。したかもしれないけど、ほとんど記憶にない。なので、ちょうどいい機会だと思い真面目に勉強しました。角運動量とか回転モーメントについてはほんとにすっぽり抜け落ちていたんですよね。ということで、個人的には7章の内容は助かりました。

          8章9章なんだけど、どうもここの記述はなじめなかった。もともと『必修物理』下巻を読み終えたら別の本で改めて電磁気学の勉強をするつもりだったこともあってか、身が入らなかったなあ。説明もごたごたしていて分かりずらかったし。一応数式はだいたい計算して確かめてましたが。

          10章は電磁場が実は光だったということで続いてます。光の直進性とか入射角と反射角が等しいとか幾何光学から入り、徐々に難しくなっていく構成。ホイヘンスの原理からフレネルの理論というのを詳しく解説してあるんだけど、途中よく分からないところがあった。さすがにこれも高校生には難しすぎるのではなかろうか。

          サイン、コサインの公式をなんども参照しながら一生懸命波動の重ねあわせの計算してましたが、少々疲れましたぞ。しかし、10章はもう一度読み返してもいいかなと思いました。他の参考書ではフレネル理論なんて解説見たことありませんでしたから。

          11章の「プランク定数」は読んでビックリ。完全に前期量子論の内容。理学部物理学科の大学生でも前期量子論の部分をこんなに詳しく勉強しないような気がする。古典物理学が破たんして量子力学理論が建設され始めるまでの端境期の話なのだけど、これまた高校生には難しすぎると思います。私は面白かったけど。

          最後の12章は特殊相対論的運動学が出てくるという、ほんとに高校生用の教科書なのかと目を疑いました。まあ、ページ数の制約もあるからそれほど詳しくは書いてないし、あれだけではどんなにできのいい高校生でもちょっと意味は分からないだろうと思う。

          この章の最後が原子核の解説になっているのだけど、そこは非常に面白かった。いやー、私は専門が物性論だったので原子核の事をあまりよく知らないのです。α崩壊とかβ崩壊の説明がわかりやすかった。ほんとに『必修物理』下巻を読んで初めて知った原子核関係の知識がありました。

          いやー、ためになったなあ。やはり物理学徒たる者、原子核や素粒子関連も基本的なことくらいは知っておかないといけませんね。

          ・・・

          とまあ、各章の感想としては上のようなものだけど、大学受験用の参考書として見ると、そもそも受験範囲を思い切り逸脱してる部分があって笑ってしまいそうです。確かに剛体も回転運動も重要だから説明したくなる気持ちは分かりますけどね。

          最近は大学生用の教科書も懇切丁寧、わかりやすいと謳ったものが多い昨今、昔の教科書とはいえ、高校生、浪人生用にここまで辛口の内容にしてあるのはある意味あっぱれという気もしてしまいます。

          まあ、私のように現役の浪人生(?)の頃は歯が立たなかったとしても、そのあとまじめに勉強すればある程度は分かるようになるものなのだから、やる気のある若者は当たって砕けてみるのも一興でしょう。頭のいい高校生ならある程度は理解できるのだろうし。

          ということで、上下巻あわせて2か月くらいかかったかと思いますが、とても楽しい時間を過ごすことができました。筆者である、坂間勇、谷藤祐、山本義隆各氏に感謝します。余裕があれば問題集にも挑戦してみたいと思ってますが、どうなることやら。
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          『大学入試必修物理(上)』駿台受験叢書
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            駿台予備校の物理の教科書として世評に名高い本書。ひょんなことから高校物理の復習を思いつき、ようやく上巻だけ読破できました。その感想を書く前に、少々昔の思い出話をしたいと思います。

            本書を購入したのは札幌で浪人生活を送っていた1985年だったと思われる。いつ、どういう状況で購入したのかはさっぱり思い出せない。当時は代々木ゼミナール札幌校の生徒だったので、本書ではなく前田和貞先生の授業を聞いていた。

            「前田の物理」はいわゆる受験のための物理で、駿台の『必修物理』は難しいけれど物理の本質から教えているという評判が高かったので、物理好きな私としては気になって購入したのだと思う。

            成績は低空飛行だったから今年もダメだろうなと半分あきらめていた。しかし、忘れもしない1986年3月20日。思いがけず新聞の合格発表欄に自分の名前を発見したのである!天にも昇るくらい嬉しかったのを憶えている。すぐさま東北にある某大学の事務に連絡し、大学寮への入寮の仕方などを訪ねたのだった。大学事務員さんの、妙にのんびりした東北弁が昨日の事のように思い出される。

            さて、大喜びしてから冷静になってみると実際に津軽海峡を渡り入寮するまでには2週間もの自由時間がある。これはもったいないと思い、始めたのが山岡荘八著『徳川家康』全巻読破と本書の勉強であった。

            小説は面白く順調に読み進めたものの、本書はとても難しかった。普通の高校物理では微分積分はあらわには使わないことになっているのに、『必修物理』ではおかまいなしに使っている。
             物理学の予備知識は要らないといったが、数学の準備がある程度できてないと困る。本書では微積分を遠慮しないでじゃんじゃん使う。「自然は数学の言葉で書かれている」以上、これはしかたのないことだ。はっきりいっておく。微積分なしに物理を理解することは不可能である。

            まえがきより抜粋引用

            がーん。私の数学の準備は不十分で全く歯が立たなかったのだった。。。orz

            ・・・

            ということで、30年の時を経てにっくき本書に再挑戦し、その結果をしたためたのがこのエントリなのである。結果から言えば、さすがに今回は数学の準備は整っていたおかげで内容はよく理解できた。自己判定によれば、理解度は80〜90%くらいだろうか。

            おいおい、100%じゃないのかよと思われるかもしれないが、本書に出てくる数式などはほとんど全て計算して確かめてみた。ただ、それでも説明の仕方などで納得いかない部分もいくつかは残ったのである。そういうところは自分なりに納得できる説明を考えればいいのだけど、そういう所に拘っているといつまでも前に進めないので適当なところで切り上げざるを得なかった。

            そういう訳で、30年前には全く手も足も出なかった本書を80〜90%理解できたことに関しては、自分としてはかなり満足している。

            ・・・

            本書の著者は、坂間勇、谷藤祐、山本義隆三氏による共著ということになっているけれど、恐らく山本氏が中心になり執筆されたものと思われる。高校生相手にここまで硬派な教科書を書くとは恐れ入るが、東大京大を目指すクラスで使われた教科書のようなので、それならこれを理解できる人もそれなりにいたのだろうなと思わざるを得ない。

            一応、本書の中身についても少しだけ感想を書いておこう。まずは目次から。

            1 質量と電気量──粒子に固有の量
            2 速度と加速度──運動を記述する量
            3 運動量と運動エネルギー──運動の基本量
            4 重力と静電場──相互作用エネルギー
            5 弾性波と音波──運動形態の伝播
            6 温度──統計量

            まず最初に粒子に固有の量として粒子数、質量、電気量などについての説明からはじまっている。具体的には電子、陽子、中性子についてである。相互作用には重力、静電気力、核力がある。相互作用があるおかげで陽子と中性子が集まり原子核になり、そこに電子が加わり原子になる。原子が集まり分子、結晶を構成する。こういう導入のしかたは「ファインマン物理学I力学」に似ている。ファインマン物理学は大学生に対する講義を教科書にしたものだから少々レベルが高いけれど、山本氏も同じレベルを目指したのではないかと思う。

            速度と加速度が本書の最初の山場で、ここで物理学では重要な概念であるベクトルについて高校生のレベルを超えて詳しく説明してある。説明の仕方が整理されていない部分もあり、ベクトル、速度、加速度の意味をきちんと理解するかどうかで本書を読み進められるか否かが別れると思う。ちなみに、30年前の私はここで沈没したのである。

            運動量と運動エネルギーは必ずしも微積分がなくてもある程度は理解できると思われるが、回転座標系における遠心力とコリオリの力などではやはり必要になってくる。この辺は一度できっちり理解するのは難しいだろう。

            重力と静電気力はどちらも数式では距離の2乗に反比例するのでひとまとめにしていると思われる。重力についての考察からニュートンが万有引力の理論を作り上げ、その過程をかなり忠実になぞって説明していると思われる。ニュートンが『プリンキピア(自然哲学の数学的諸原理)』を出版したのが1687年。日本なら5代将軍綱吉による「生類憐みの令」の頃である。ニュートン恐るべし!

            5章の弾性波と音波に関する説明は力学部分と比べるといまひとつだったように思う。下巻をまだ復習していないので、そちらである程度補われている部分があるのかもしれないがよくわからない。波動について一般的に成り立つ数学的な表現などの説明があるけれども、これでは不十分だと思われる。

            上巻最後は温度についてで、統計熱力学の分野。ここも中途半端な説明が多いように思う。もちろん、高校の教科書よりは突っ込んだ解説がなされているのだけど、これではかえって分かりづらいのではないかという感想を持った。高校の教科書は実験などについても適度に紹介されていてバランスが良い面もある。

            ・・・

            総合的な感想としては、高校で学ぶ範囲を大学初年級レベルで説明してある感じの内容であった。力学分野の解説は文句なく素晴らしいけれど、電気、波動、温度などでは必ずしも教育的ではない部分もある。私がその部分の教科書を書くとすれば、構成も含めて説明の仕方ももう少し違ったものになると思う。

            良かったところは速度、加速度の概念をきちんと微積分を使って説明しているところで、

            x = ( x2 - x1 )/( t2 - t1 )

            ニュートンは上の式で時間間隔を短くしていく極限を考え左辺 x の上にドット(・)を載せた量を「流率」と呼んだようである。そしてこの方法を流率法と名付けた。流率のことを現在では速度と呼んでおり、これが微分の最も原始的な姿である。

            微分法の誕生(ニュートンの流率法)


            微分積分は高校の数学で習うのだから、それをどのように物理に応用するかを理解するのが重要だと思う。その意味では粒子そのものの軌跡を表すxy図、傾きが速度を表すx-t図、速度と時間の関係(その傾きは加速度!)を表すv-t図について、もう少し詳しく説明したほうがよいように思った。

            いずれにしろ、今から下巻にもチャレンジする予定なので、下巻を読破してからもう一度考え直してみたい問題点である。あと、この教科書とは別に問題集もあり、こちらもとてもレベルが高そうである。時間的な余裕があれば是非とも全問解いてみたいが、どうなるのかはわからない。

            ・・・

            ちなみに、30年前にチャレンジした山岡荘八著『徳川家康』二十数巻は読破したけれども、北海道で生まれ育った私は内地の地理に疎く、関ヶ原がどこにあるのかもよく分からないままであったことにあとで気づいた。電車で岡崎から名古屋に向かう途中に気づくまで、漠然と関東のどこかだと思っていたのだ!

            やはり本を読むときは注意深くあるべきだと悟ったのはこのときであった。
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