ピンちゃんの赤貧日記

明日は明日の風が吹く
『エージェント・スティール』主演カート・ラッセル
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    13時55分からテレ東(TVh)で日曜イベントアワー『エージェント・スティール』鑑賞。

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    『カリスマ大泥棒のクランチは強盗グループの1人である弟のニッキーに裏切られ、5年半の囚人生活を送っていた。出所したクランチは再びかつての仲間を集め、世界で最も貴重な本を盗み出す計画を企てる。インターポールの捜査官ビックは、彼らが強盗を働く前に阻止しようとするが、その手口を見抜くことができない。ビックは凄腕で有名だった元天才詐欺師のサムという人物に協力を依頼するが…』
    テレビ番組欄から引用

    出だしからテンポの良いギャグ満載の痛快クライム・アクション。カート・ラッセルとマット・ディロンのコンビがなかなかよい。途中で「特攻野郎Aチームじゃないんだぞ」などというセリフがあったりしてにやりとしてしまう。

    それにしてもマットディロンである。こやつピンちゃんと2才しか違わない。高校生の頃『アウトサイダー』と『ランブルフィッシュ』を映画館で観た記憶があるんだけど、あの頃は二代目ジェームズ・ディーンとして売り出す気満々な感じだったな。意外に鳴かず飛ばずで見かけなくなったなと思っていたら『メリーに首ったけ』でコメディもやれる俳優だと判明した。あとピンちゃんの印象に残ってる作品と言えば『酔いどれ詩人になるまえに』くらいかな。

    本作『エージェント・スティール』でもマットディロンはいい味をだしている。あまり話題にならなかったのかネット上に情報が少ないのだけど、出演者のほぼ全員が(顔に見覚えがあるけど名前が分からないひとを含めて)とぼけた演技でピタリとはまっていて、なかなかの快作。ストーリーはさほど重要ではなく、細かいギャグを楽しみながら眺めるとよい。

    (この映画を見たくなった人は↓は読まないで下さい)

    ・・・
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    『裏切り者』主演マーク・ウォールバーグ
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      13時55分からテレ東(TVh)で日曜イベントアワー『裏切り者』鑑賞。

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      『 ニューヨークのクィーンズ区。仲間をかばって服役していたレオが晴れて出所。レオは女手ひとつで育ててくれた母のためにもまじめに人生をやり直す決意を固める。さっそく叔父フランクの経営する会社で仕事を始める。そこはニューヨークの地下鉄の修理などを請け負う大手企業。そこではレオの親友ウィリーも働いていて、将来フランクの片腕として期待される存在となっていた。ある日、レオはウィリーに連れられ地下鉄工事の入札に立ち会った。しかし、そこは政界をも巻き込んだ陰謀、汚職の巣窟となっていた。やがて、ひとつの裏工作が彼らの人生を狂わす事件へと発展する……。』
      allcinemaより引用

      映画が始まるとちょっと見続けるのが難しいくらい暗い雰囲気で困ってしまった。私は精神的に落ち込んでしまうような映画は苦手なのだ。まず、主人公のレオが刑務所から出所し帰宅するところから映画は始まる。自宅にはレオの出所祝いに友人知人たちが集まっている。逮捕服役といっても凶悪犯罪ではないからだろうか、出所を祝ってくれるひとびとがいるのだ。

      ネットで調べた情報なども総合すると(テレビ放映ではカットされていてわからない部分もある)、レオは仲間といっしょに自動車泥棒をしていたところを捕まったようだ。ただし、レオは仲間をかばい罪を全て一人でかぶったらしい。過ちを犯してしまったレオではあるが、仲間は裏切らない。

      そんなレオの出所をもっとも喜んだのは母親である。女手一つでレオを育てあげた母親は、レオの帰宅をまちわびていた──この手のシチュエーションにピンちゃんは弱いのだ。とても他人事と思えず、ちょっと見ていられない原因であった。映画の舞台はアメリカだし、自分とは無関係の物語であるはずなのに、ママンの期待を裏切り続けてきた我とわが身に置き換えて自責の念にさいなまれてしまう。

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      出所したレオは、さっそく叔父フランクの会社で親友のウィリーと働き始めるのだけど、これが間違いであった。フランクはニューヨークの地下鉄修理を請け負う企業の経営者であるけど、そこでは談合はおろかライバル企業を蹴落とすための犯罪行為が横行していた。フランクの片腕として汚れ仕事を実行していたのがウィリーで、どうやらレオが逮捕された自動車窃盗事件の首謀者でもあるようだ。

      映画の邦題は『裏切り者』であるけれど、原題は「The Yards」で、電車の操車場のことである。出所間もないレオはウィリーに連れられ、他の仲間と共に操車場にいく。事情の分からないレオは、電車に小細工する仲間たちを見ながら立ちすくんでいる。ライバル会社の整備が不完全であるように見せかけるためなのか、単にマッチポンプで修理箇所を増やすためなのかはよく分からないが、仲間たちは溶接棒のようなもので電車の配線をショートさせているようだ。

      操車場には管理小屋のようなものがあり、電車会社の担当者が常駐している。今までは担当者にウィリーが裏金を渡し忍び込ませてもらっていたのだが、今回に限り裏金を受け取らない。ライバル会社から既に多額の金を受け取ったのでそちらに乗り換えるという。担当者が警報ベルを鳴らし、揉みあいになったウィリーは誤って担当者を刺殺してしまう。

      一方、管理小屋の外では、警報で駆け付けた警官とレオが格闘になり、奪った警棒でレオは警官を打ちのめし逃走する。

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      心ならずも犯罪の片棒をかつぐことになり、自分の犯していない殺人罪まで負わされそうになったレオは、身を隠しながらどうすべきか決断できないでいる。レオはウィリーの殺害現場を目にしていたが、それを口外するつもりはない。ここでも仲間をかばっている。このあたりで何かおかしいなと感じたのだけど、これは邦題である「裏切り者」とも関係している。

      ここからはピンちゃんの想像で書くけど、どうやら叔父のフランクともども、悪友ウィリーもその仲間たちもイタリア系であるようだ。映画の中でもウィリーがライバル会社の若者とイタリア語(だと思うのだけど自信がない)で会話するシーンがある。

      異国アメリカで生きていくため、彼らはみな助け合っているのだけど、それがいきすぎて犯罪行為をももみ消そうとする。マフィアほど強固な結束ではないにしろ、彼らはファミリーを形成し、沈黙の掟もあるようだ。日本でいうところの「空気」とか同調圧力に近いものかもしれない。或いは昔の村落共同体にあった仲間意識みたいなものだろうか。

      日本人であるピンちゃんにはよくわからないし、映画でも特別に強調はしていないのだけど、アメリカ人が見ればそれとわかるような描き方なんだろう。

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      この映画はそれほど有名ではないから未見の人が多いと思うので結末は書かない。けれど、地味で陰気な映画かと思ったらば、非常によくできた社会派映画で、アメリカの現実の一断面を見事に切り取っている傑作映画だと思う。

      この映画は実際に起きた事件を題材としていて、監督であるジェームズ・グレイとその父親も事件の関係者であるらしい。時間がないのでこれ以上は調べないけど、興味のある方はネット検索でもう少し詳しい情報を得ることが出来るはずである。
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      『この世界の片隅に』鑑賞記
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        恐る恐るドアを開けると8畳ほどの空間だった。ひょっとするともう少し狭いかもしれない。一瞬スタッフの控室の類かと思ったが勇気を出して聞いてみた。

        「あの、、、ここは映画館ですか?」
        「ええ、そうですよ」

        背中を向けていた女性がふり返り答えてくれた。元映画少女の気配がある。ホッとしながら中に一歩入り込み部屋の中を見渡してみた。壁一面に知らないタイトルの映画ポスターが貼られていて、女性が何か作業をしていた机の上には映画関係のグッズのようなものが並んでいる。

        古いビルの二階がボーリング場になっているのは知っていたけど、映画館がビルの中のどの辺にあるのかは知らなかった。受付らしいこの空間とは別にもっと広い待合室に繋がっているのかとも思ったけれど違うようだ。どうやらここが待合室も兼ねているらしい。

        この世界のなんちゃらやってますかと聞くと、ええやっています、6時半からです、とのことだった。時間は午後5時50分で外は既に真っ暗だ。6時からだと勘違いして大急ぎで来たのだけど、間に合ったとの安堵はすぐにどこかに飛んでいき、40分もどうやって時間を潰そうか咄嗟に頭の中で考えた。

        「じゃあ、こちらでお待ちください」

        ちょっと時間を潰してきますと喉まで出かかったところで先にソファーを勧められてしまった。映画館の女性はすぐに背中を向け作業に戻ってしまったから深い意味はなかったのだろう。外で時間を潰してきますと断って車に戻ってもよかったのだけど、せっかく勧めてもらったのに、この小さな待合室から外に出ていくのは何か悪いような気がした。

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        壁に緞帳のようなものが垂れ下がっていて不思議に思っていたらそこがスクリーンのある部屋への出入り口で、緞帳のかげに鉄製のドアがある。時間になると件の女性が幕を手で横にひろげ、中から数人のお客さんが出てきた。女性がレジに移動したので鑑賞料金1700円を支払い、代わりにひとまとめになったパンフレットなどを手渡された。

        シアター内は座席が五列になっていて、満席で40名ほどが鑑賞できる。予想通りのミニシアターだ。客はわたしを含め5名。わたしのすぐ後にやってきて待合室で小声で話をしていた男性二人組、上映時間ぎりぎりにやってきた男性、そしていつ現れたのか謎の銀髪老人。こんな小さな映画館にくるくらいだからみな映画好きなのだろう。

        映画が始まると、主人公「すず」が子供の頃の話から始まった。途中で気づいたけれど、左上に日付がでてくるのは、すずがつけていた日記からの記述ということなのだろう。とても牧歌的で、絵を描くことが大好きで、ぼんやりものの女の子の成長が淡々とつづられていく。途中で夢の話なのか空想なのかよく分からないエピソードが出てくるのがひとつのポイントのようだ。

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        このアニメはひとりの女性の人生を淡々と描いている。日常生活の小さなエピソードの積み重ねが人生であり、姉妹の何気ない会話や食事、学校での出来事や淡い初恋、結婚、新しい家族との生活。誰もが同じようでいて細かく見ていくと違う道を歩んでゆく。

        歩んでいた道の前に運悪く戦争があったからといって、なにかが突然に変わるものではないという当然の事実をありのままに描いている。あくまで生活が先にあり、それとは別に日本は戦争をはじめてしまったのである。

        なるべく予断をもたないようにしようとしていたから、このアニメ作品は第二次大戦中の広島の話としか知らなかった。なので、なかなか戦争の話にならないなと思いながら最初は眺めていた。広島で生まれ育った少女は呉へと嫁ぎ、呉は軍港の街だった。軍需施設の多いこの街は当然のことながら米軍の標的となる。

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        映画の最後にスタッフロールが流れ、そのあとにクラウドファンディングに協力した人の名前が、恐らく全員分の名前が流れてくる。一体何人の人がこの映画製作に協力したのかは知らないけれど、いかにもこの映画にふさわしい資金集めである。

        さほど大きくないスクリーンの下の方には薄い汚れがあった。最初は気になったけれど、途中でそんなことは忘れスクリーンに見入っていた。その上を本名とは思えない名前がところどころにあるのを微笑みながら見送って映画は終了した。

        緞帳をくぐり待合室に出ると元映画少女らしきスタッフ女性はいなくなっていた。夜9時近かったから勤務時間が終わり帰宅したのかもしれない。観客の一人だと思っていた謎の銀髪老人が代わりに観客に感謝の言葉をかけている。どうやら観客ではなく映画館の館長さんらしい。

        映画館の外は寒かったけれど、よーし、明日も頑張るかとしみじみしながら車に乗り込んだ。
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        『ザ・シューター/極大射程』
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          午後2時50分から『ザ・シューター/極大射程』鑑賞。前にも観たことあるよなと思いつつもはっきり思い出せない。原作は言わずと知れたスティーヴン・ハンターの「ボブ・リー・スワガー」シリーズ。欧米作家の粘り強い筆力のことを「地肩が強い」と表現したのはナンシー関だっただろうか。言いえて妙とはこのことで、まさに地肩が強い作家ハンターが作りだしたボブ・リー・スワガーはとても魅力的な男であるが、どのように映画化されているのだろう。

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          『元海兵隊のスナイパー、ボブ・リー・スワガー(マーク・ウォーフバーグ)は一線を退き、広大な自然広がる山奥で隠遁生活を送っていた。しかし、退役したアイザック・ジョンソン大佐(ダニー・グローバー)が彼のもとを訪問し、大統領暗殺計画が発覚したため、ボブの力を借りたいと言う。ところが、それは巧妙に仕組まれた罠だった…。』
          テレビ番組欄から引用

          ザ・シューター/極大射程 - 予告編


          原作小説を読んだのは15年近く前だったと記憶しているけど、重厚に折り重なった物語から上手い具合に映画としてのストーリーを抜き出している。映画のストーリーとしては三段階に分けることが出来る。

          まず、プロローグとして、スワガー軍曹と相棒観測手ドニーがアフリカの戦場で戦っている場面から映画は始まる。味方部隊を援護するため奮闘するふたりだったが、エリトリア領内に深く侵入していた事実を葬り去りたい作戦本部はふたりを見捨てる。相棒ドニーは敵のヘリによる機銃掃射で殺されてしまう。

          何とか脱出したスワガーは除隊して故郷で隠遁生活を送っている。そして除隊から3年経ったところからがこの映画のメインストーリーである。隠遁生活をおくるスワガーにジョンソン大佐という人物が接触して来る。長距離狙撃によるアメリカ大統領の暗殺計画があり、その阻止に協力して欲しいという申し出だった。

          愛国心を刺激されたスワガーは協力することにするが、それは巧妙に仕組まれた罠だった。逆に狙撃犯として追われる身になるスワガー。ここから新しい相棒になる若きFBI捜査官、元相棒の妻などが登場しスワガーの逃亡を助けることになるのだけど、ここから先は実際に見てのお楽しみということで。

          ・・・

          原作小説ではスワガーがFBIに逮捕されてから身の潔白を証明する後半部分も見ものなのだけど、映画では割とあっさりした描写になっていた。何しろ原作は分厚い文庫本上下二冊のボリュームがあり、登場人物についてもひとりひとり丁寧に描写しているから、全てを映像化する訳にはいかない。

          ところで、最近トランプ氏が大統領選に勝ち、日本人が知っていたアメリカというのは都会のことだけで、トランプ人気を下支えしたアメリカの田舎を知らなかったという話があるけれど、まさに原作小説ではアメリカの田舎の気風が描かれていて興味深い。

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          濡れ衣を着せられたスワガーは地元の山奥に逃げ込むのだけど、大統領狙撃犯として全米で指名手配されているお尋ね者にもかかわらず、昔からスワガーを知る地元の人々は陰に陽にかばい続ける。この手の田舎の閉鎖性と連帯感というものは日本にもあるけれど、銃を手放すことをかたくなに拒否し続けるメンタリティと共に古き良きアメリカ人というものの原型が感じられて興味深い。

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          最後に、積極的に進める訳ではないけどyoutubeで「Shooter 2007」を検索すると、フルムービーが幾つかあります。日本語字幕はついてないけど、無料で観たい人には便利かもしれません。
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          『家族の昭和』関川夏央著
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            昭和63年の年末は居酒屋に泊まり込んでいた。目出度くもない年が明け、店長に頼まれ店先に日の丸の小旗を掲げていると老人が歩み寄ってきた。

            「その日の丸はなぜだい」
            「はあ、天皇が亡くなりましたから」
            「そうか」

            老人はそのまま無言で立ち去ったが表情は満足そうであった。今にして思えば、若者が天皇陛下崩御に際し弔意を示していることに意を強くしたのだろう。老人を落胆させずに済んだのは上出来であったが、店長に頼まれ半旗を掲げはしたものの、22才の私は半旗の意味を知らなかった。山勘で答えたのがまぐれ当たりしただけなのである。

            居酒屋に泊まり込みでバイトしていた私は疲れており、天皇陛下の容体は気にかかっていたが、亡くなったと聞いてもさほどの感慨はなかった。私が物心ついた頃、昭和天皇は既に老人で、「あっ、そう」が口癖のおじいちゃんだった。時代の変わり目に自分がいたと気づいたのはもっとあとのことである。

            こうして自覚のないまま私の昭和は終わりを告げたのだった。

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            家族の昭和 (新潮文庫)
            関川 夏央
            新潮社
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            本書は関川夏央が家族像の推移という切り口から昭和という時代を再構成した労作である。ガイド役として選んだのは、向田邦子『父の詫び状』、吉野源三郎『君たちはどう生きるか』、幸田文『流れる』、鎌田敏夫『金曜日の妻たちへ掘戮覆匹任△襦

            この選択が成功したかどうかは難しい所であるが、最後のガイド役がテレビドラマであるのは異質である。『金曜日の妻たちへ掘戮肋赦陀年の家族像を知るためのガイドであるが、比較のためか同じ作者のドラマ『男女7人夏物語』『男女7人秋物語』なども参照されているから、その都合もあったのだろう。

            ・・・

            関川氏は本書で昭和の家族像を幾つかの角度から見ることで立体化しようと試みている。向田邦子は関川氏のお気に入りの作家らしく、その生い立ちから亡くなるまでをなぞることで向田家の物語を詳述している。向田家は「苦労人でわがままな父親を、家族全員が支える物語」である。

            私生児として生まれた邦子の父は学歴もなく苦労して保険会社で出世していく。祖母の葬式で父の苦労の一端を垣間見た邦子は、父が家の中でわがままであってもそれを許す気持ちになる。明治大正の時代には子が親を許すという感覚はなかったと山本夏彦が指摘していたが、昭和4年生まれの邦子は父を許すのである。明治大正にはなかった昭和の親子関係の特徴といっていい。

            平成の親子関係はさらにフランクになり友達感覚にまで近づいてしまうが、その萌芽は昭和にあったことになる。

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            幸田文はいうまでもなく幸田露伴の娘であるが、明治37(1904)年生まれである。一代の碩学である露伴は娘に漢籍ではなく家事全般を叩きこんだ。向田邦子より25才年長の文の時代、女に学問は不要という考えが主流だったのだろう。昭和の家族像を立体的に見るための例として幸田家が適当であるとは思えないが、文のエピソードから関川氏は昭和の女性の自立についても書きたかったのであろう。

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            昭和24(1949)年生まれの関川氏は『金曜日の妻たちへ掘戮脳赦60年代を語っているが、バブル前夜という時代背景を抜きにして語ることはできない。サラリーマンの夢が一戸建てという時代で、それは手の届く目標になっている。金妻以外に『男女7人』なども引き合いに出しているが、向田家について詳細に語られていたようなエピソードはほとんど出てこない。むしろ昭和の終わりという時代についての考察が主である。

            金妻は要するに浮気、不倫の話であるし、男女7人は30才前後の男女の恋愛物語なのである。1926年に始まった昭和が89年に終わるまで、家族像はどのような変遷を経たかというのが本書のテーマであったが、本書で取り上げたドラマはどれもそのテーマには即していない。その点は作者も気づいていて、足りない家族成分を小津安二郎の映画に求めている。

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            『家族の昭和』というタイトルからすると羊頭狗肉な記述が目立つという欠点があり、この点で不満の残る本書であるが、これはおそらく最初からテーマと方法論に乖離があったからである。昭和の家族像の変遷を語るには向田邦子の個人的なエピソード(例えば恋愛話)が詳しすぎ、幸田文についても同様である。関川氏の個人的な興味に引きずられ過ぎている。テレビドラマは昭和末年における20代30代の恋愛話の分析としては興味深いけれど、本書のテーマからは外れている。

            結論としては、本書においては統一的なテーマがあるとは思わず、緩く関連しながらも各章が独立した昭和の物語だと思えばそれほど違和感はない。
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